千葉日報のコラム 「忙人寸語」

 

2022年9月13日

「千葉日報」のコラム 「忙人寸語」に掲載されました

首都圏で死者10万、住居焼失者200万人を超える被害をもたらした関東大震災は、流言による殺傷事件も生じさせた。引き金となったデマや、背景にある差別・排他意識といった問題は今の社会にも通じ、教訓とすべきことは多い。

県内でも各地で事件があったが、知る人はさほど多くない。ただ現在の野田市で起きた福田村事件を巡るっては、100年目に当たる来年の公開を目指した映画製作が報じられ、埋もれた悲劇に光が当たる。

震災直後の9月6日。香川県から来た薬売りの行商15人が東葛飾郡福田村で利根川の渡船を待っている際、地元の自警団に襲われ、幼児や妊婦を含む9人が命を落とした。朝鮮人による略奪や放火を伝えるデマが広がり、各地で自警団が警戒していた。

驚くのは蛮行を犯したのが普通の村人たちだったこと。デマで不安や恐怖感が広がる中、聞き慣れない言葉を話す行商は不審者とみなされた。事件を語り継ぐ市民団体の市川正廣さんは「差別や不審者への排他的意識などに群集心理が重なり、憎悪につながった」と指摘する。

現場近くに立つ追悼慰霊碑(墓碑)は全国からの寄付で2003年に建立。地元にとっては負の歴史であり、建立の理由や背景は刻まれなかった。

市川さんらは03年にかなわなかった官民合同による慰霊祭の実現を願う。節目の年が悲劇に向き合う機会になってほしい。

(原文は縦書。「▼」を「。」に変えて改行しました)




 


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